2011年10月10日

ナイアシンの話②
-ナイアシンは何をしているのか-


抗うつ剤として現在使われている薬の多くは、神経と神経の間に分泌されたセロトニンやドーパミンの取り込みを遅くして効果を長持ちさせることにより効果を発揮します。いわばリサイクル・リユースです。でも合成量そのものが足りなければ、長期間薬を服用しなければならなかったり、薬の効き目が不十分だったりします。

自前のセロトニン分泌を増やすためには何が必要か? その鍵はアミノ酸と鉄とナイアシンにあります。ナイアシンはセロトニンを合成するときの補酵素として活躍しています。

ナイアシンが薬よりも安全な理由は、セロトニンの合成量が体内できちんとコントロールされているからです。不足の場合は調整出来ませんが、多すぎる場合は体が自分で調節するので過剰になる心配はありません。

ナイアシンの利点はもう一つ、睡眠ホルモンを同時に正常化することです。睡眠に重要なメラトニンの多くはセロトニンから合成されています。うつの時には睡眠にも問題があることが多いのですが、ナイアシンは自然のリズムを取り戻し睡眠を改善します。

ナイアシンの活躍の場は大変広く、必要量も個人個人で大きく変わります。たとえば、あまり知られていない重要な働きとしてエネルギーの運び手としての役割があります。エネルギーは最終的にATPという形をとります。このATPを産生する電子伝達系に電子を運ぶ役割をしているのがナイアシンから出来るNAD(H)NADP(H)です。NAD(H)NADP(H)は酵素の約20%、約500種もの酸化還元反応に関係しているのでナイアシンの量が体内の多くの活動を左右していることがわかります。
 
 

ナイアシンにはそれ以外にも遺伝子の修復を調整したり神経周囲のミエリン鞘を正常化したりと多彩な働きを持っています。

前回、ナイアシン欠乏によって皮膚、消化管、脳に影響が出る話をしましたが、ナイアシン欠乏が広範囲に影響を与える理由がこれでお分かりいただけたと思います。

ビタミンCと同様、ナイアシンも必要量の個人差が大きい栄養素の一つです。厚労省が発表しているナイアシンの一日所要量は成人男性16mg、成人女性13mg。栄養療法の効果を見ながら調節していくと人によっては3000mg以上必要となることがよくあります。実に200倍もの違いがあります。

ナイアシンにはナイアシンとナイアシンアミドの形があります。日本人の場合大量のナイアシンを摂ると血管が拡張して顔などが真っ赤になるホットフラッシュの症状が出ることがあります。サプリメントで摂る時はナイアシンアミドの形で摂りましょう。